年始にいただいてしまいました。
毎年ありがとうございますm(_ _)m

昨年の秋あたりから「鋼」に変わってしまいましたのに、
ちゃんと書いて下さって…感謝しております。
それにしても大佐だけで、これだけ書いちゃうなんてス・スゴイ。

読んでて思ったんですけど、エドが帰ってこなかったせいで、
野郎だけのわびしークリスマスになったんじゃないかしらん、と。
つい、自分の描いたクリスマス画を思い浮かべてしまいました。
今年は、ロイとエドの二人でクリスマスが出来るといいんですが…。
どーかなぁー

                   2004.1.11 玲

                   2004.1.17 一部修正

誤字・脱字なんて…ちーとも気がつきませんで…。
でも、改稿になってからの大佐って、最初のより大人の余裕がナイ気がしますね(^^;)エドにメロメロの「アレ」になっちゃってるのかなー。それはそれなりに楽しいですけれど、いったんブチっといった後はどーなるんでしょ?ちょこっと心配。ても、がんばれ大佐! 2004.1.17 玲
                   








 彼は書類に走らせていたペン先を止めて、ふと背後の窓を振り向いた。

「よく降るな…」

 執務室の窓から見える景色は一面雪に覆われているのは、温度差で曇ったガラスを拭かなくてもわかっていた。それでもなんとなく口に出すと、唐突にそれまで感じていなかった雪の重みが、狭くはないが広くもない部屋に圧し掛かったような気がする。
 みしりと音がした。
 それはが今まで雪の重みを感じさせずにいたこの部屋ではなく、自分の中のどこかで鳴った音だということはわかっていた。
 誤魔化すように先ほど副官が置いていったコーヒーを一口飲む。
 苦味は誤魔化されることなく、彼の今は不要な部分の感覚を尖らせるだけだった。ペンを持つ手の下にされていた書類がたてる、かさりという音に添うように、彼の中のどこかがかさりかさりと動く。
 溜息をつくのは宜しくないと思っていても、半ばヤケになってコーヒーを飲み干した口からは重たい溜息が漏れる。

「今頃は……」

 その後に続く「どこにいるのかな?」という言葉は、悔しくなって飲み込んだ。自分でもわかっているというのに、あの子供が今どこにいるのかすら知らない自分をわざわざ再確認することはない。

「今頃は…………ここに向かっているところかな?」

 言いなおした言葉は限りなく叶わない、あまり人には知られたくない願いだ。
 小さな小さな、彼にしてみれば至極当然な願いなのだが、ここ一ヶ月、クリスマスのサンタクロースですらその願いを叶えてはくれなかった。年も明け、結構な日付が過ぎた今、口に出したところで誰が叶えてくれるわけでもなく、まして願う相手が悪過ぎた。
 どこにいるのか、向っているのか。どちらにしろ、口にするには自虐的に過ぎた。自分で言っておきながら、そのあまりの実現性の低さに机に突っ伏したくなる。
 あの子供は―――より正確に言うと『あの子供たちは』―――クリスマスにニュー・イヤーにも帰ってこなかった。
 可能な限り思いついた、恐らく彼らが向うだろう行き先にある軍部施設に、口実とも本題とも取れるパーティの招待状を送っておいたが、無事渡すことができたという報告は受け取ったにも関わらず、彼らが東部に姿を現すことはなかった。
 水に濡れると面倒な全身鎧の弟のために、なんだかんだと雪深い東部を避けて南部へ行ったか、それとも家族とも呼べる人々がいる故郷に戻ったのか、そこまで推し量れることはできないが。確実なのは、自分が送った招待状は綺麗にかわされてしまったということだろう。
 せめてカードを送ってくれてありがとうとか、なんとか、電話のひとつでもよこさないかとは思ってみるが、便りがないのは元気な証拠と普段言い切る彼であるだけに、そんなことを思うだけ無駄だということもわかっては、いる。
 それでもなんらかのアクションはあって然るべきだろう。
 そこまで考えて、今までの思考のあまりの女々しさにさらに落ち込み、ああ、それもこれも雪が降っているからだ、などと窓の外に責任を転嫁する。
 あの子供が東部に帰ってこないのも、仕事が進まないと副官が煩いというのにこんなことを考えてしまうのも、全て雪のせいなのだと反論しないのをいいことに押し付けて、彼は謂れのない苛立ちを雪にぶつけながら曇ったままだった窓を軍服の袖で乱暴に拭った。
 周囲に同じくらいに高い建物がないせいか、背後の窓からの襲撃なんて考えてもいないような広さの中に、彼の手首から肘までの長さの分の視界が現れる。
 その視界の、ちょうど肘に当たる部分に、見覚えのある赤と鈍色がうっすらと透けて見えた。
 まさかと思って視界を広げて見直した時には、もうその色は見えなかった。
 強い願望が見せる幻覚だと言い切るなら、見えた色は赤だけのはずだ。彼を手に入れれば必ず付随してくるものではあるのだけれど、彼しかいらないのだと自分が思っていることに自覚はあるのだから。
 彼が……あの子供がもうすぐ、ここに来る。夢でも、幻でもなく。
 立ち上がって待ち構えているなんて、悔しいからしてやらない。大人の余裕というものを少しは見せてやらねば。
 そう、なんと言って迎えてやろう。

「2度も私の誘いを断るとはいい度胸だな、鋼の」?

 それとも「おかえり、随分会えなかったせいで焦がれ死ぬかと思ったよ」?

 どちらにしても本心なだけに、あの子供の顔を見た瞬間に口を出る言葉に我ながら予想がつかない。だがこの嬉しさはどの言葉であっても本物なのだ。
 暖かなココアは中尉が用意するだろう。
 雪に濡れた身体を包むタオルは曹長が。
 濡れた鎧にオイルで手入れをするのは少尉が。
 あの一生懸命な子供たちに甘い大人がここには大勢いるのだ。
 ならば自分は誰にも負けないものを用意するしかないだろう。











 暖かで、居心地のいい空気を持つ部屋と、ここに帰ってもいいのだという言葉を。
 君に。

snowy_seaason