お願いがあるの。
お願いがあるの。
人は葬列で故人を惜しみ懐かしみ。
故人は捧げられたあらゆる供物をたずさえて天へと昇る。
荘厳に響く鐘の音を背に受けて。
彼は逝った。
まだ若く、妻を娶ってほんの数年。2人のあいだに出来た最愛の娘も未だ幼く。
突然の夫、あるいは父の死に戸惑い嘆く彼女らを見て、たいていの参列者はこう考えるだろう。
『まだ若いのにお気の毒に』
『あの2人はこれからどう暮らしていくのか』
『故人もあの2人を残していくことが1番の心残りだろうに』
……いいえ?
いいえ。
若くして死ぬというのは確かに気の毒なことだけれど、彼は何度も死線を潜り抜けてここまできた人。かといってそんな運の良さがいつまでも続くなんてこと、彼も私も信じていなかった。
彼はなくしたダメージは大きい。
けれど思い出はなくならない。時の過ぎるままに形を変えこそすれ、私たちの……私の望むままに彼は心の中に在る。
想い出をよすがに残された家族が生き延びるのはよくある話。
意図して築き上げた城までは、誰も入ってくることはない。
問題は……そう、彼の心残り。
葬列で泣きながら取り乱す私の頬を張り、あの人は言った。
『あなたがしっかりしなくてどうするのだ!』
夫が死んだことはもちろん悲しいし、これから娘と親子2人でどうやって暮らしていけばと思ったことも事実。
けれどよく考えてみて?
夫が殉職してしまった私たちには、軍からの経済的な援助が出る。愛想がよくて、上司にも部下にも受けは良かったから、ありがたいことに何かと助けてくれようとする人たちも多い。
ねえ、考えてみて?
夫が別の人のために死んでしまったことを、嘆いていたとはあなたには思えない?
思い出してみて?
夫は最後に誰に役立とうとしたのだと思う?
最後の最後まで気にかけていたことは何?
だって彼が最後に耳にしたのは、きっと彼を殺した犯人か、意識が朦朧としていたとしても、あなたなのよ?
取り乱すなと、あなたがいうのね。
それを嘆くなと、あなたがいうのね。
最後の最後に、勝ちを拾ったあなたが言うのね。
いいわ。
彼の病床で私とあなたが向かい合わせに、最後の顔を看取るハメにならなかっただけ、まだマシってものかもしれない。
彼を失ったあなたの気がふれて、幼い娘を欲しいと言い出さないだけマシってものかもしれない。
彼の最後の言葉と視線を、あなたに奪われる瞬間に立ち会わなかっただけ、マシってことなのでしょう?
知っているでしょう?
こう見えて、私は聡い女だって。
死人に口なし。
彼はあなたを守るためにも、私たち家族を守るためにも、蘇って語り出すことはないわ。
秘密を抱えたあなたたちの最後が、私の望まぬどんなものであっても、周りがこうだと思う通りに嘘を突き通して、彼とあなたが知る以外のことを塗り変えてあげる。
お願いがあるの。
あなたは私の見ていないところで死んで。
余計なものを私たちに残さないで。
幸せな、いい顔で死んでいったと、最後に夢を見せてちょうだい。
私が諦める、その時まで。
ひい様は、ヒューロイを書こうとするとグレイシアさんが出てくるそうです。
そーゆーのも才能?
あいかわらずのグレイシアさん。スゴイです。
まっとうにケンカしたら、ロイに勝ち目はないに違い有りません。
相変わらず難しい小説……ナイ頭で必死に考えてます。
「幸せないい顔で…」というのはドコにかかるんだろうとかとか…
ロイがヒューズの敵討ちとかして壮絶に死んだら、怒るんだろうなぁこの人とか。
ロイさん気がふれエリシアを欲しいと言ったとしても、きっと再構築とヒューズ蘇生
のために使いたい程度かもよ?嫁にするよりヤバいかもしれません…
2004.7.29 ray