「それ、作ったのか」
屍食鬼を見てエドが言った。
合成獣ではなく、人の姿の人工生命体?
まっとうな人体錬成などではなく、鬼の錬成をしたと言うのか……
「私の作品だ。綺麗だろう」
「き・綺麗って…この……ゾンビの何処が?…ブキミなだけじゃん。スゴイ事はスゴイけどさ…」
タンパク質が細菌によって分解され……有毒な物質と悪臭をはなっているさまは…実際ブキミを通り越して臭いだけだった。
腐敗進行中の歩く死体、といった方がいいんじゃないか思う。
何でこんな錬成を?
『頑張ってこの程度だった』とは思わなかったあたり、エドは天才の部類にはいる。
「ゾンビとは酷いな。形状維持が難しいんだ、錬金術の知識があるのならば協力して欲しいのだよ」
「その前に、構築式を見せてくれるか?」
「ああ、これだ」
「うーん、これで成功した?」
「一度だけ………」
ロイも言っていたが、これでは足りない。何故成功したのかが問題だと思う。
「これじゃ、出来損ないの屍食鬼がいいとこだね………」
「何が足りない?」
「何だろうな…………?」
まっとうな体型のものを造る予定ではあったようだ。
能力が、ちょっぴり及ばなかっただけで…
「協力してもらえるのだろうな?」
「残念ながら…しかねる」
「何故?断る。恐ろしいのか。それとも自信がないとか?」
確かに、自信なんかなかった。
得意なのは金属や物質の錬成で………
ゾンビもどきなら出来そうな気はしたが、それではディルたちと変わらない。生体系はニガ手だ。人体錬成に失敗して以来、何かを創造すする事が怖くもある。
「馬鹿か、何でそんな阿呆な実験に付き合わなくちゃいけないんだ?医療系の錬金術に興味はあるけれど、ホムンクルスを作る意味が俺には理解できない。だいたいお前ら、学生達を材料やエサにしているんだろう」
仮にも職員という立場にある者がっ…・
エドはこの学校が気に入っていた。
授業も、仲間達も…・・
すぐにでも殴りたおしたかもしれなかった。
けれど、両手の自由は奪われていて、錬成する事もできない。
「どうするの?」
ディルの側にいた学生姿の屍食鬼の1人が言った。
他のゾンビ達とは違い、人間に近い生き物だった。
あいにく腐敗が進んでいて少々型くずれをおこしていた。
「どいつもこいつも、欲のない……協力しないのなら、始末するしかないな」
『えっ・・・』
嘘でも協力すると言うべきだったかと…後悔したが、どういう訳かうまく言葉が出せなかった。居すくんでいるわけでもないのに、身体もうまく動かせなかった。
「幸い、身よりはないし、お前が欲しいだけ食べたら始末する事にしよう」
それが食事をしている間、屍食鬼達の様子を見てくるといってディルは実験室を出て行った。
『食うって何…?もしかして、俺失敗した?
ボリボリと頭から食べられるのかと思ったんだけど…』
残った生き物は、エドの顎をおさえつけ、妖しげな液体を流し込んだ。
「げほっ……」
デロンとした液体は、苦く不味くて・・・
セキ込んだので、半分も接種しなかったように思うが、それでも………
『何だっ・・・これ・・・』
「学内で出回っているような緩いシロモノとは違うよ。元国家錬金術師が作った催淫剤だ。いくらなんでもこれは効くでしょ?」
『げっ・・・・』
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