即効性だったらしい。

ドクン!

心臓が跳ね上がる。
ざわざわとした感覚とともに、内部からじわりと熱くなってくるようだった。
バケモノはエドのシャツ前を引き裂き、露わになった皮膚の上を、なで回した。
ピクン、とエドの躯がはねる。

「触るな・・・っ何すん・・・」
「ふふ・・・感じているよね。ほら、もうこんなに大きく膨らんでいる。もっと触って欲しい?」
「け・結構だッ!」

遠慮したと言うのに、下着ごとズボンをも引き裂き、曝された下腹部に舌を這わせた。

「やっ…止めろっ…」
「感じてきた?ちゃんと気持ちよくなってもらわないと…ね」
周りから舐めていき、中心ですでに堅くなっているそれを口に銜えしゃぶりだす。
「…お・俺‥に‥‥触る……なっ‥」
「気持ち、いいでしょう?」
「いいわけない…っだろー」

と、叫びながらも、先端からはドクリと白いものが溢れてきて、バケモノはそれを貪るように飲みこんでいる。
膝が、がくがくとしている。
力が入らねぇ…

「痛くはないでしょ?」

このまま『化け物』に犯されるなんて事、まっぴらだった。

「おいしいよ、君の」 

ちろちろと唇を舐める舌が、不気味に赤かった。

「俺をどうする気だ?」
「どうもしない…協力する気になったに言ってよ。全部食べちゃう前にね」

そう言ってエドのものを吸い上げる。

「あっ…う…っ…」

知ってる奴でも、お断りしたい所だったが…
何でこう気持ちが悪いのか……

「君は…ブレリオ先輩の…ッ…こ・恋人なんだろう?何でっ……」
一瞬だが、バケモノの動きが止まった。
これの正体がマレインだろうと、エドは考えていた。

「…何で…」

少々戸惑っているようだった。

「ミュラーの側にいたいだけ。邪魔をするなら排除するよ」

排除って……

「本気で、殺す気か?」

彼はどこまでかかわっている?

あるいは何も知らないのかも知れない。

「ミュラーの友達には手を出したくないんだけど……貴方のコレ、凄い力を感じ…る…だから、あなたの精液と…血、全部ちょうだい」

「じ、冗談っ止めてくれッ…!」

ミイラになっちまうっ!

にっこり、と

不気味なほどに白い貌で、マレインは笑った。

「薬が効いてきたから、抵抗もできないでしよう?」
手術台に横たわらせられて、馬乗りになったマレインがエドの胸の突起をいじりまわす。
堅くそそり立つ茎に両手を這わせる。

気持ちが悪いはずなのに、反応しちゃうのは男の性だ。

「あっ……い…」

ポイントをついた愛撫には関心するしかない。

「また、良くなってきた?」

躯中熱くて・・・
男相手ははじめてだなんて事、言わないけれど……
国中を旅して回っていた。
危ない目に遭った事がなかったわけでもない。
だけど、強姦されたりという事は皆無だったのだ。
エドは1人ではなかったから、鎧姿の弟が側にいて兄を守ってくれていた。
初めての相手は、上司で保護者で……同じ国家錬金術師。
だから、
 大佐は何処にいるんだと、何で助けにこないのかと、エドはそこにいない相手へと、責任転嫁をしていたりする。
マレインの大きな口にすっぽりと銜えられ、刺激されながら、必死で手首の拘束を解こうとしていた。
 少しでも緩んでくれれば、何とか出来るかもしれない。

ガタリ

音がして、マレインがそれに気をとられたそ瞬間、鈍い音がしてその躯を沈めた。
手術台の一部を錬成し、尖ったもので襲ったのだ。一瞬でも動く事が出来れば、たとえ大男でも沈める自信はあったのだ。

なのに、
振り返ると、マレインはそこに立っていた。
平然と。
手応えは確かにあった。頭に大穴を開けるつもりの錬成だった。骨の何本かは確実に砕けているはず…・なのだが。

「まだ、動けたんだ…」

頭部を直撃したはずなのに、それはあっという間に元に戻っていた。
ギラギラと赤く充血した瞳は、自分を拒絶したエドに向けられていた。

「よくもやってくれたね。早く元の躯に戻りたかっただけなのにっ・・・」

弄ぶのを止め、エドのすべてを取り込もうとしたその瞬間、それは焔に包まれた。


ボンッ!

「ギャ―――――ッ!」

「それは私のモノだ、君にはあげない!」

ロイは断言した。

一度の焔で何とか出来る相手ではない。
第2弾をおみまいしようとした所で避けられた。
マレインを追うよりエドの手当が先だと、ロイは判断したのだ。

「俺が誰のモンだって?」
「おや、バケモノのエサになりたいのかい?」
「!」
『それだけは嫌だっ!』
青白くなった顔で、ブンブンと首を横に振る。
口元でフッと笑った男は、
エドをかばいながら、ロイは自分を追ってきた屍食鬼ご一行相手に、立て続けに焔を放つ。
ボッ…ボボンッ…!

生き物の焼ける臭いがした。

「いい格好だな」

一息つくなりそう言った。
だけどいきなりの嫌味ったらしい科白に、エドはホッとしていた。
とににかく、助かったのだ。
安心して力が抜けた。

「遅いっ!」

つい、文句を言ってしまったのだ。
力が入らなくて崩れ落ちた躯を、ロイは抱きしめた。

「すまない………」

怒るか馬鹿にされるかと思ったのに、素直に謝った。
唇がエドの口を塞ぐ。

「んっ…」

ロイが口写しに飲ませたのは中和剤だった。

「これは…」
「数分で動けるようになるはずだ」
「準備がいいね。俺が何飲まされたのか、知って?」
「バーンスタインのノートにあったので、試しに作ってみただけだ。まさか役にたつとは思わなかったよ・・」

手早く胸の傷の手当てをし、戒めから解き放ったエドの躯を、そっと抱きしめる。
大事な宝物のように。

「ンな事・・・やってる場合かよ?アレ・・・追いかけなくてもいいのか?」
「実験は何処まで進んでいるんだ?」
「もう…ちょい、ってトコかな?放っておくとヤバイと……思う。そっちは?」
実験は最終段階だったが、エドが断ったので完成にはまだ至っていないはずだ。
「バーンスタインの研究は手に入れた。後は現物を抹消するだけだ」

情報交換しながらも、ロイの手は止まらない。
やんわりと、勃ったままのそれの射精を手助けしてやる。

「あっ……離せっ…も、出るっ……」
「いくらでも出していい。このままだと苦しいだろう?」

 そう言って唇に軽いキスをした。

「…あんた、俺を甘やかし過ぎだっ……」
「んっ…」

びくびくと躯を振るわせて、それは弾けた。

「ちゃんと抱きたいけれど…それはこの件が終わってからだ」
気怠いが、暖かな感覚に包まれる。




立てるか?……先に行くぞっ!」

温もりに安心したのもつかの間、
恋人がかけてくれた上着を片手に、あわててロイを追いかける。






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