番外 暁の灯
『居酒屋』 



セントラルの繁華街で、安くてうまい居酒屋を見つけたと、そうコリンが言って・…士官学校同室組のトーマス、ダン、コリン+戦闘訓練でずっと一緒だったジムの5人でそこへ繰り出した。
 どうやって見つけてきたものか、美味しいモノに目がないコリンはこういう場所を見つけてくるのもうまい。
 赴任先の西部から、出てくるたびに片端からチェックしているんじゃないかとさえ思う。
 取れたての野菜の煮物も、こんがりと焼けた串も本当に美味しくて久々に食が進んだ。

出入り口でちょっとしたいざこざ…・・
 何処にでもいるんだよね……

「俺は大尉だ。」

 この場に、俺より上の奴が居たら…

『みんな楽しくやってるんだ。階級も何も関係ないだろ』

「君、」

 通りすがりのチビのくせに、よけいな口は出すなと腰巾着がエドを止める。
 ブチ
 チビなどと言わなければ、これ以上言うつもりはなかった。
 けど…
 すうつと、息をひとつついて、エドは銀時計を突きつけた。

『銘は鋼、そして階級は中佐だ。不足か』

「なっ…・」

「鋼のれ・錬金術師……」

 青くなってやがる。
 腰巾着君は泡吹いて、立ったまま気絶していた。
 後悔すんならやるなってば。
 
 こんなのはロイのが似合ってる。
 尊大に、あの男なら言い放つのだろう。

『勘定と店の備品の損害分、そしてクリーニング代を払ったらさっさと帰れ。』

 目立った。
 思いきりめだった。

「エド・……」

 何時の間に来ていたのか、背後に友人達がいた。
 自分たちも勘定をすませ、店を出る。

「ごめん…・・」

「君が、鋼の錬金術師」

「エドワード・エルリック…が本名なのか」

 落ち着き払った声でダンが言った。

「し・知って?」

「ダン、お前知ってたんならなんでっ…」

 仲間の中で、気づいてたのはダンだけのようだった。
 国家錬金術師が士官学校に入るだなんて、思うはずがなかったのだから。

「候補生達の失踪と幽霊事件の調査のために、俺達の学校に来たのか?」

「いや、それは違う。バーンスタイン教官の研究に興味があって、でも、学生じゃ
ないと近づけそうになかったから……」

「だったら、卒業しなくたって……」

それは、ただの失敗。
でも…

「居たかったんだ…あの場所に……」

 ポツリと告げたそれは、まぎれもなく本心で。



「エド…」

「俺の周りにいたのは、大人達ばかりで………初めてだったんだ。同じような年頃の仲間は…だから……」

「おれはエドと一緒にいて、楽しかったよ」

 コリンがそう言った。

「俺だって…だけど作戦だったんだろ。」

 トーマスがすねたように言った。

「あの後ちょっと調べてみた。事件はトップシークレットで何もわからなかったといっていい。だけど、作戦の指揮官は当時大佐のマスタング閣下で……彼と彼の部下が、かかわっていたと推測できたよ」
 今年から情報部だというダンが言った。
 よく調べたもんだ……。
 
「鋼の錬金術師は、焔の錬金術師の直属だったな…」

 やっぱバレバレだな。

「保護者で保証人なだけだ」

 命令に逆らえる立場じゃないのは、本当だけど。
 
「どーやって…連絡はアレン先生がやってたのか」

「何で……」

 よく一緒に居たじゃないかと言われてしまった。
 そんなに、一緒だったっけ?

「はは…それはちょっと言えない…」

 そのアレン先生がマスタング少将閣下だとまでは、思ってないみたいだった。
そりゃそーだ。
普通、指揮官みずから前線に出たりはしないものだからな。













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